エレクトロニクス研究所
AI解説約6分

TinyMLとは?マイコンでAIを動かす入門ガイド

TinyMLの概要と仕組みをわかりやすく解説。マイコンでAIを動かすための対応ボード、開発環境、具体的な始め方を紹介します。

2026-03-24

「AIをマイコンで動かす」と聞いて、「そんなこと本当にできるの?」と思いましたか?

私もそう思っていました。でも「TinyML」という分野が、それを現実にしています。

この記事では、TinyMLとは何か、なぜマイコンでAIが動くのか、どうやって始めればいいかを初心者向けに解説します。


TinyMLとは?

TinyML(Tiny Machine Learning)は、マイクロコントローラー(マイコン)などの小型・低消費電力デバイス上で機械学習を実行する技術です。

従来の機械学習は、クラウドや高性能なPCで行うものでした。しかしTinyMLでは、ArduinoやESP32のような小さなマイコン上で直接AI推論を行います。


なぜマイコンでAIが動くの?

「小さなマイコンでAIが動くなんて信じられない」と思うかもしれません。

その答えは「モデルの量子化(Quantization)」です。

通常の機械学習モデルは、32ビットの浮動小数点数を使います。これをTinyMLでは8ビットの整数に変換(量子化)することで、精度を少し犠牲にしながら、モデルサイズを約4分の1に圧縮できます。

例えば、スマートフォン向けの画像認識モデル(MobileNet)は数MBですが、量子化してTinyML向けに最適化すると、数百KBにまで小さくできます。


TinyMLでできること

具体的にどんなことができるのか、いくつか例を挙げます:

音声認識 「ヘイ、〇〇」のようなウェイクワードを検出。常時電源をつないでおく必要がなく、バッテリーで動く小型デバイスにできる。

ジェスチャー認識 加速度センサーのデータから、手首の動きを認識。腕時計型デバイスなどへの応用。

異常検知 工場の機械の振動データを常時モニタリングし、異常な振動パターンを検出して警告を発する。

画像分類 小型カメラで撮影した画像を、マイコン上で分類する。


TinyML対応の主なボード

Arduino Nano 33 BLE Sense

TinyMLに最も適した入門ボード。加速度センサー、マイク、照度センサーなど複数のセンサーを内蔵しており、追加部品なしでAIを試せます。

項目 スペック
CPU nRF52840(Cortex-M4, 64MHz)
メモリ 256KB RAM / 1MB Flash
内蔵センサー 加速度、ジャイロ、マイク、照度、気圧
価格 ¥4,500前後

M5Stack Basic V2.7

ESP32-S3を搭載し、TensorFlow Liteが動作。カメラ内蔵で画像分類もできます。

ESP32-S3

ESP32の後継チップ。AIアクセラレータを内蔵しており、TinyMLの処理性能が向上しています。


開発環境

TensorFlow Lite for Microcontrollers

Googleが提供するTinyML向けライブラリ。Arduino IDEから使えます。

# Arduino IDEのライブラリマネージャーから検索
TensorFlow Lite

Edge Impulse

ブラウザ上でTinyMLモデルを作れるクラウドサービス。データ収集からモデル作成、デプロイまで一貫して行えます。無料で始められます。

プログラミングの知識が少なくても使えるので、初心者におすすめです。


TinyMLを始めるロードマップ

ステップ1: ハードウェアを準備する Arduino Nano 33 BLE Senseを購入。センサーが内蔵されているので、これ一枚で始められます。

ステップ2: Arduino IDEをセットアップ Arduino IDEをインストールし、Nano 33 BLE Senseのボードライブラリを追加。

ステップ3: サンプルプロジェクトを動かす TensorFlow Lite for Microcontrollersのサンプル「magic_wand」(ジェスチャー認識)を試す。スケッチ例からそのままビルドできます。

ステップ4: Edge Impulseでオリジナルモデルを作る Edge Impulseにサインアップし、自分のデータでモデルを学習させてみる。

ステップ5: デプロイと応用 作ったモデルをArduinoに書き込み、独自のアプリケーションに組み込む。


まとめ

TinyMLは、「AIはクラウドで動くもの」という常識を覆す技術です。

マイコン上でAIが動くことで:

  • バッテリー駆動の小型デバイスにAIを組み込める
  • プライバシーに配慮した「デバイス上処理」ができる
  • ネット接続なしでAIが使える

これからのIoTデバイスには、TinyMLが当たり前のように組み込まれていくでしょう。

まずはArduino Nano 33 BLE Senseとサンプルプロジェクトから試してみてください!

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